邦画『リリイ・シュシュのすべて』は社会の構図を皮肉に描いたトラウマ映画

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ナイトメア・シンジ

大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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今日ご紹介するのは、

”大人も子供も誰も救わないし、報われない。
音楽も心の拠り所にはなるけど、それ以上は何も、もたらさない”。

リアルで残酷。

そんなトラウマを植えつける邦画「リリィ・シュシュのすべて」です。

映画「リリイ・シュシュのすべて」は2001年10月6日公開の日本映画。

上映時間は146分。

トラウマ映画邦画 「リリイ・シュシュのすべて」はインターネットの掲示板への書き込みという形で、岩井俊二と一般の読者がともに作り上げていった実験的な原作小説をもとに、地方都市に暮らす多感な14歳の少年少女たちを描いている映画です。

(この小説は、リリイ・シュシュの熱狂的なファンである”サティ”という人物が、2000年4月1日にリリイのファン・サイト「Lily holic(リリイホリック)」を開設した設定で作られている。基本的な物語は掲示板を使って岩井俊二自身によって書かれる“書き込み”によって進行していく。その際に岩井俊二はサティ以外にも複数の人物を使い分けて書き込み、掲示板には閲覧している一般人も書き込みが可能。その一般人の書き込みも小説の一部として進行していくという実験的なもの)

タイトルの「リリイ・シュシュ」は映画内に登場する架空のシンガーソングライターLily Chou-Chouの名前です。

「リリイ・シュシュ」と言う名前は、ドビュッシーの最初の妻の愛称である”Lily”と、2番目の妻との間に出来た娘の愛称”Chou-Chou”から付けられています。

(物語のキーパーソンとなるリリイ・シュシュ役は歌手のSalyu)

監督は岩井俊二。

出典:映画.com

監督の岩井俊二について少し述べます。

1993年、テレビドラマ「if もしも~打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」を演出し、日本映画監督協会新人賞を受賞。

(「if もしも~打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」は再編集され、1994年劇場公開)

1995年、初の長編映画『Love Letter』を監督。
(傑作)
1996年に映画『スワロウテイル』を発表。
(賛否両論)

独特な映像美から”岩井美学”と呼ばれるようになる。
(筆者には2002年11月に発売された2002年のワールドカップを戦い抜いたサッカー日本代表に密着した長編ドキュメンタリー。監督と編集の「六月の勝利の歌を忘れない 日本代表、真実の30日間ドキュメント VOL.1/VOL.2 」も印象に残ります)

トラウマ映画邦画「リリイ・シュシュのすべて」の出演者について

リリイ・シュシュの熱狂的なファンの主人公の蓮見雄一を演じるのは、市原隼人。
最も核になり、印象を残す星野修介役には忍成修吾。
星野に弱みを握られ、援助交際をさせられる津田詩織を蒼井優。
雄一が密かに恋い慕っている少女、久野陽子は伊藤歩。

では、トラウマ邦画「リリイ・シュシュのすべて」のあらすじをラストまでご紹介します。

邦画「リリイ・シュシュのすべて」のあらすじ

中学2年の雄一はカリスマアーティストであるリリイ・シュシュに心酔している。自らが主宰するリリイのファンサイト”リリフィア”の中で”青猫”というハンドルネームのリリイ・ファンや他のリリイファンとのチャットに心癒される。

だが、中学1年生の頃は同じ剣道部の部員として仲が良かった星野に、雄一はいじめの標的にされる。星野は裕福な家庭に育ち、スポーツ万能、中学の生徒会長で中学校の入学式では、新入生代表の答辞を読んでいた秀才。

雄一と星野が、仲間と沖縄旅行に出かけた夏休み後の新学期。父親の会社が倒産し、家族が離散することになった星野は突然豹変する。

クラスの不良を叩きのめし、飯田と辻井を子分に従えて雄一に万引きなどで得た金を上納させるようになる。詩織もまた星野の命令で援助交際させられ、その上がりを星野に渡すことになる。雄一が秘かに思いを寄せる陽子も、彼女を嫌う女子同級生の企みで星野の命令のもと、レイプされてしまう。

12月8日、代々木で開かれることになったリリイのライブチケットを手に入れた雄一は、掲示板の”青猫”と会う約束をして会場へ向かう。だが、そこにいたのは星野だった。

雄一が”リリフィアの管理人”であることに気づいていない星野は、雄一のチケットを奪い、一人でライヴ会場に消えてゆく。

ライブ会場に入ることの出来なかった雄一はライヴ終演後、星野を刺し殺す。雄一は逮捕されず15歳になり、淡々とした日々をただ送る…。

映画「リリイ・シュシュのすべて」のトラウマ度

豊かな田園地方を舞台に美しい音楽とスタイリッシュな映像の中、陰惨に繰り返されるいじめ。

映画「リリイ・シュシュ」の中では、大人も子供も誰も救わないし、報われない。
音楽も心の拠り所にはなるけど、それ以上は何も、もたらさない。

(山田洋次監督作品とは対極にあるトラウマ映画)

人前での自慰や、少女の丸刈り、全裸で田んぼに突き落とされるなど衝撃的なシーンが数多く存在します。

(トラウマ間違いなし)

しかし、この映画「リリイ・シュシュ」は後のスターを輩出している映画もあります。

市原隼人は14才で映画初出演。
忍成修吾は19才、蒼井優もまだ当時15才。
(伊藤歩21才は1996年岩井俊二映画「スワロウテイル」ですでに脚光を浴びている)

いや、でもね、この映画「リリイ・シュシュのすべて」は極端なアップが少なく、ハンディ・カメラを使ったりして、役者の表情を捉えるシーンは少ない。
いわゆる感情と主観を排除した作品になっています。

突き放し方がハンパない。

トラウマ映画邦画「リリイ・シュシュ」岩井俊二曰く、「遺作を選べたら、これにしたい」作品。

完成度は高い。
されど、トラウマ度も高い。
孤高の映像主義者ともいうべき岩井俊二の代表作のひとつ。
お時間あれば。

(ナイトメア・シンジ)

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大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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