今、映画『凶悪』とピエール瀧に思う

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ナイトメア・シンジ

大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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脚本家・演出家・演技トレーナー・映画評論者の4つの顔を持つナイトメアシンジです。

さて、ミュージシャンで俳優、声優、ナレーターなどのマルチタレントのピエール瀧(51歳)が2019年3月12日にコカイン使用で逮捕されたことは社会に衝撃を与えました。

ピエール瀧と言えば、今や超売れっ子の役者です。

今年、年末のNHK紅白歌合戦でのミュージシャンとしての出演も噂されていた人物です。

”コカインは二十代の頃からやっていた”という証言も飛び出し、映画業界ならずとも、音楽業界も震撼させました。

ピエール瀧は本名瀧正則。1967年4月8日静岡生まれ。

1989年友人の石野卓球と「電気グルーブ」を結成。

(前身バンド「人生」)

(ピエール瀧自身は楽器の演奏できないミュージシャン)

2000年以降は俳優としてのメディア露出が増えました。

俳優として、大きな転機を迎えたのが2013年でした。

この年は映画「凶悪」、「くじけないで」、「そして父になる」の三本の作品に出演。

異なる役柄を見事に演じ、数々の賞を受賞しています。

中でも、ピエール瀧が世間から大きく注目されたのは映画「凶悪」です。

ピエール瀧の「凶悪」についても、簡単に紹介しておきましょう。

「凶悪」は2013年9月21日に公開されました。

上映時間は128分。

監督は映画「凶悪」が長編映画デビューとなる白石和彌。

(傑作映画「孤狼の血」(2018)の監督です。続編も期待)

ピエール瀧の映画「凶悪」概略

『人を殺し、その死を巧みに金に換える“先生”と呼ばれる男がいる』

警察も知らない3件の極悪事件があった…。

告発者は元ヤクザ。しかも拘置所に収監中の死刑囚だった。

驚愕の証言を聞いた雑誌ジャーナリストは、疑心暗鬼にとらわれながらも 現場を徹底的に歩き、関係者を訪ね、確信する。

告発は本物だったと。

雑誌ジャーナリストの追及は警察をも動かし、真の“凶悪”を追い詰めてゆく。

ピエール瀧の映画「凶悪」は死刑囚の告発をもとに、未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづったベストセラー・ノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」(新潮45編集部編)を映画化したものです。

もう少し、細かく映画「凶悪」のあらすじを導入部分だけお話すると、

取材のため東京拘置所でヤクザの死刑囚の須藤と面会した雑誌ジャーナリストの藤井は、須藤が死刑判決を受けた事件のほかに、3つの殺人に関与しており、そのすべてに”先生”と呼ばれる首謀者がいるという驚きの告白を受ける。

須藤は”先生”がシャバで、のうのうと生きていることが許せず、藤井に”先生”の存在を記事にして世に暴くよう依頼したのだった。

藤井の調査で、やがて恐るべき3件の凶悪事件の真相が明らかになっていく…。

出演は、事件を追いかけるうちに、熱を帯び、ジャーナリストとしての使命感と正義と悪の間で揺れ動く藤井修一役を山田孝之が演じています。

”先生”役は自身初の悪役リリー・フランキー。

そして、死刑囚の須藤純次をピエール瀧が演じているのです。

3人とも、素晴らしい演技をしています。

中でも、ピエール瀧にとって、この作品は最大の転機と言っても良い作品です。

映画「凶悪」のピエール瀧の演技

拘置所の接見室で”これ以上、この取材を続けるかどうか迷っています”と心情を吐露する藤井に激高する須藤の顔。

(このヒト、やくざかも)

焼却炉に入らない遺体を一心不乱にナタでバラバラにする須藤の姿。

(怖すぎ)

燃える遺体を見ながら、煙草に火をつけるときの須藤の表情。

(一仕事終えた感)

どれをとっても、背筋が寒くなるお芝居です。

でも、最も特筆すべきは、刑務所で意気投合した佐々木賢一の出所祝いのシーン。

須藤がシャバに出てきたばかりの佐々木にお祝いに”抱きたい女”を選ばせるが、佐々木は知らずに、部屋にいた須藤の女を指名してしまう。

一気に凍りつく部屋の雰囲気。

誰もが須藤が暴れ出すと思いきや、須藤は佐々木に”賢ちゃんだからいいか…”としばしの沈黙の後言う。

”暴力的で凶暴だが、何を考えているかわからない須藤の得体の知れない怖さ”を匂わせるピエール瀧の凄さがここにあります。

演技センスは本当に素晴らしい。

ピエール瀧は、実はこの映画「凶悪」のオファーを”子供に見せられない”と一度断っています。

(関係者の説得で、この作品に出演した)

世間では、未公開新作ばかりか、過去のピエール瀧の出演した名作映画やTVまで自粛する傾向があります。

ピエール瀧の罪は重いし、社会に重大な影響を与えたのは事実です。

しかし、作品に罪はありません。

ピエール瀧を全面的に肯定するわけではありませんが、作品に関わったすべての人を思うと封印はして欲しくないところ。

(個人的な意見です)

賛否両論は承知の上で申し上げますが、作品は”見る人が選択する”のも一案だと思うのです。

わからないで、見ちゃって不快な思いをする人をなくすために、

”この映画には、社会上好ましくない人物が出ている可能性があります”とテロップを冒頭に入れるとか、帯に書くとかどうでしょう?

(けっこう、真面目に言ってます)

蛇足ながら、

「新潮45」は映画「凶悪」のモデルになる記事”上申書殺人事件”を2005年11月号に掲載しています。

(「新潮45」は1985年の創刊以来、手記、日記、伝記などノンフィクションや様々なオピニオンを掲載する総合月刊誌)

その「新潮45」もここ数年は、部数低迷していました。

2018年8月号の杉田水脈の「LGBT」への差別的寄稿が引き金になり、2018年9月21日の新潮社社長声明「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられた。内容に問題があった」との謝罪文受け、「新潮45」」は同年9月25日に休刊を発表しています。

すべては諸刃の剣といったところですね。

最後に、

映画「凶悪」の先程ご紹介した佐々木賢一の出所祝いに、こんな場面もあります。

佐々木が腕に覚醒剤を注射するのを、煙草片手にソファに座り眺めている須藤ことピエール瀧。

麻薬取締法で逮捕されたピエール瀧はこのシーンをどんな気持ちで眺めていたのか気になります。

薬物は本人だけでなく、家族も、その周りの人々も滅ぼす。

カルト宗教映画「サザンコンフォート/ブラボー小隊・恐怖の脱出」を最後まで読んで下さった読者様へ

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(ナイトメア・シンジ)

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大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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