サスペンスホラー アニメ おすすめ ひぐらしのなく頃に

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ナイトメア・シンジ

大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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失敗からは学ばない。学問より自信?ポジティブシンキングなんて言葉がありますが・・・・・・。はじめに言い始めたのが誰かは分かりませんが、「失敗を恐れるな」という言葉をよく耳にします。

おそらくですが、誰も失敗は恐れていません。失敗した結果として発生する損害などを恐れているのです。会社で失敗などしようものなら、取引先の信用を失ったり、商品が納期に間に合わなかったりと、周囲を巻き込んでの、とんでもない結果が待っています。

それが怖いわけで、失敗そのものは、怖いものでは決してありません。失敗を恐れずに何事にも挑戦する姿は、輝かしく見えるものではありますが、一方では、他人の迷惑を顧みない独善的な姿でもあります。

しかし、失敗してはじめて気づくこと、学ぶことがあるのも事実。失敗とまではいかなくても、実際に行動したり体験したりしなくてはわからない物事はあります。机上の空論だけでは、きっと、どこかが抜けているでしょう。成長するためには行動や体験が不可欠です。

しかし行動には失敗はつきもの。失敗から学ぶことはあるにせよ、学ために失敗することはできません。とすれば、失敗の許されない立場にいる人の場合は、何から学べばいいのでしょうか。

行動して、体験して、失敗は抑えながらも、それでも成長する方法について、今回は考えてみたいと思います。とはいえ、何の手がかりもなく、話を進めるのでは退屈でいけません。なので、今回は「ひぐらしのなく頃に」というアニメを題材として、「成長」について考えてみたいと思います。

ひぐらしのなく頃に」はサスペンスでもなくホラーでもない、あるいはサスペンスであり、かつホラーでもある、不思議な位置にあるアニメです。この主人公の立場にこそ「サスペンスホラー」という言葉はぴったりなのではないでしょうか。

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【とても分かりにくい物語】

アニメとしても、またはゲームとしても、「ひぐらしのなく頃に」はたくさんの作品が出ていて、どこから入っていけばいいのか、触れたことのない人は、まずその入口で悩んでしまうのではないでしょうか。たとえば興味があってネットで調べてはみるものの、「結局どういうことなの」という疑問をすっかり晴らすことは難しいと思います。要は「概要」が把握できないのです。

なので、ここでは「もっとも分かりやすい入門の入門」といった形で、「ひぐらしのなく頃に」のおおまかな内容を紹介したいと思います。

ただ、作品の特性上、「概要」を説明すること自体がネタバレになってしまいます。もしネタバレを見たくない方は、次の見出しは飛ばしてください。

【プレイヤーがみるプレイヤーの姿】

アニメにしてもゲームにしても、まず知らなくてはならないことは、「ひぐらしのなく頃に」の物語としての構成です。

といっても、よく言われているような「出題編」「解答編」に分かれている――ということではありません。それは事実ですし、知っておけばわかりやすくなるだろうとも思えますが、それよりも前に知っておかなくてはならないことがあります。

それは「主人公は誰なのか」ということです。単刀直入に言ってしまいますと、主人公は「古手梨花」です。そして、あらすじはどんなものなのかというと、次のようにまとめることができます。

「古手梨花が、理想の結末を迎えるために奮闘するお話」これだけでは、まだわかりにくいと思いますので、もう少し説明を加えてみます。「ひぐらしのなく頃に」は、言ってみれば「劇中劇」の構造を持っています。

つまり「マルチエンディングのゲームがあって、それを古手梨花がなんとかハッピーエンドへ導こうとしている様子」を、視聴者である僕らが見ている――そんな構造です。

さらに言うと、プレイヤーであるはずの古手梨花も、決して第三者視点で物語を見ているわけではありません。古手梨花もまた、その「ゲーム」の登場人物のひとりなのです。だからイメージとしては、「〝ゲーム〟の世界に入り込んでしまった古手梨花が、登場人物の1人として、物語をハッピーエンドへ導こうとしている」ということになります。

そしてアニメとしての「ひぐらしのなく頃に」は、そういう「設定」を隠したまま進んでいきます。設定を隠す――とはどういうことかというと、古手梨花〝以外〟のキャラクターの視点から、物語をみる――ということです。そうすると、登場人物であり、かつプレイヤーでもある古手梨花は、「普通の登場人物」としてしか映りません。そういう方法で、「設定を隠している」わけです。

その「古手梨花〝以外〟のキャラクター」から見た物語が、「鬼隠し編」「綿流し編」「祟殺し編」「暇潰し編」「目明し編」「罪滅し編」「皆殺し編」「祭囃し編」などと呼ばれているエピソードであり、それらのエピソードが「出題編」「解答編」に分けられているわけです。

以上が、「ひぐらしのなく頃に」のアニメ作品としての概要です。ここでは細部は語っていませんが、こうした全体の構造を知った上で作品を見れば、いくらかはわかりやすくなるのではないでしょうか。

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【それは失敗の物語】

ところで、「古手梨花が、マルチエンディングのゲームをなんとかハッピーエンドへ導こうとしている」と紹介しましたが、当然ですが、「ゲーム」だとすれば、「ゲームオーバー」になるおそれもあります。そして梨花は、実際に何度も失敗しています。失敗しては、何度もやり直しています。

では、どうやって「やり直し」をしているのでしょうか。その秘密が、「羽入」の存在です。羽入は、作中に登場する「オヤシロ様」で、「時間を巻き戻す能力」を持っています。それによって、梨花は何度も「リセット」と「やり直し」ができるのです。

しかし、古手梨花にとっては、「ひぐらしのなく頃に」は決して虚構の世界ではありません。現実の世界なのです。その現実の世界で触れる人びとが死んでいく過程は、たとえやり直しが効くのだとしても、きっと梨花にとってはやりきれないものがあったのでしょう。

実際、アニメの中に登場する古手梨花は、ほぼ諦めており、時にはアンニュイな雰囲気を出している場面もあります。仲間や大勢の人が死ぬ――そんな結末に至るたびに、梨花はオヤシロ様(羽入)の力を借りてやり直す――そのループからずっと抜け出せないでいるのです。時には自分自身が死んでしまうことも・・・・・・。

アニメとして、最終的には梨花の望む「ハッピーエンド」を迎えることに成功するのですが、それまではひたすらに失敗の連続でした。

つまり「ひぐらしのなく頃に」は「失敗の物語」なのです。これほど失敗していれば、梨花でなくても心が折れてしまうかもしれません。

【おすすめ作品】

今回は、「ひぐらしのなく頃に」を紹介してきました。もちろんサスペンスホラーという意味において、おすすめの作品です。アニメとしても「かわいらしい絵柄」で描かれているので、そういった意味でもおすすめです。

ですが、僕がもっともおすすめしたい相手は、「失敗」によって落ち込んでいる人です。といっても、「失敗しても諦め泣けば必ず良い結果が訪れる」というおとぎ話みたいなおすすめのしかたではありません。そういった意味でも間違いではありませんが、もっともおすすめしたい理由はそこではありません。

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【日常そのものが・・・・・・】

サスペンスホラーといえば、創作物のジャンルとしての認識が広く知れ渡っていることと思います。それでも間違いではないのですが、「サスペンス」にしても「ホラー」にしても、「恐怖」や「戦慄」などといった意味があります。

つまり日常生活そのものがサスペンスホラーなわけです。もちろん、日常的にゾンビなどに出くわすことはありません。

ですが、いつ事故に遭うのか分からない、いつ災害に遭うのかわからない、いつ病気になるのかわからない、いつ犯罪に巻き込まれるのかわからないなどなど、そういった心配は常にあります。

他人事だと思っていればそんな恐怖は感じないかもしれないですが、決して他人事ではありません。つまり創作物とは種類こそ違うものの、日常生活はそのまんまでサスペンスホラーと言えるわけです。

そんな日常的なサスペンスホラー、身近な言い方をすれば不安や戦慄などとなりますが、そのひとつにあげられるのが「失敗」です。

【古手梨花は再起した】

マルチエンディングゲームに例えるなら、古手梨花の選んだ選択肢はどれも「ゲームオーバー」に繋がるものでした。自分の選んだ選択肢は、ことごとく「失敗」だったわけです。そして失敗は、意欲減退につながります。「ひぐらしのなく頃に」における梨花も、物語の前半では、すでに「ハッピーエンド」へ導く努力をする意欲を失っています。

ですが、後半では、その意欲を取り戻し、梨花を含めた登場人物たちは、念願のハッピーエンドを迎えることができます。

ところで、どうして梨花は立ち直ることができたのでしょうか。

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【失敗からは学んでいない】

梨花は何度も失敗を繰り返してきたわけですが、そのたびに時間を巻き戻しやり直しをしています。ということは、時間を巻き戻す前(バッドエンドに繋がってしまっていた世界線)の記憶は、時間が巻き戻された世界にいる人物には思い出せないはずです。梨花と羽入を除けば。

ところが、「圭一」という登場人物が、その「ありえない記憶を思い出す」という奇跡を起こします。梨花が立ち直れた理由は、それがきっかけとされています。

このように説明すると、いかにも「諦めなかった結果」のように思えますが、そうじゃないんです。いや、そういう見方もありますが、もう一方で「奇跡が起きた」というのは「成功体験」なわけです。

もちろん、最低でも1度は失敗していないと起らない奇跡なので、失敗したがゆえの成功と言えなくはないですが、ここで注目してほしいのは、梨花が再起する動機づけとなった事柄は、「過去の失敗」ではなく「現在の奇跡」であることです。

意図的ではないにせよ、その奇跡は「ハッピーエンド」をもう1度目指すためのきっかけになりました。この奇跡は、大きな成功のために必要となる、小さな成功と言えます。

その小さな成功がなかったら、きっと「ハッピーエンドを目指す」という動機も持てなかったことでしょう。これは僕らにも言えることです。

【失敗からは学ばない方がいい】

失敗した場合、せめて何か学ばないと損だ、という理屈はわかります。が、精神的にどうでしょう。他人から失敗のダメ出しをされ続けたら、気持ちが萎えてしまわないでしょうか。他人ではなく、自分自身で失敗を見つめ続けるのも、気が塞いでしまう原因となるかもしれません。

ですが、失敗と成功は、二者択一のものではありません。学校の試験に例えるとわかります。試験は100点と0点だけではありません。その中間に1点から99点があります。

もし、1点しか取れなかったとしたら、それは「失敗」なのでしょうか。結論から言うと、失敗ではありません。

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【ないものは見えない】

1点しか取れなかったということは、逆さまに言えば1点は取れたということです。つまり「1点分の成功」はしているわけです。では、なぜその1点分は「成功」することができたのでしょう。その理由がわかれば、それを拡大し、ほかの失敗した部分にも応用できることがあるかもしれません。

【ひぐらしのなく頃に】

失敗から学ぶ――と聞くと、場合によっては、失敗しても挫けるな、という精神論のような見方をしてしまうことがあるかもしれません。ですが、そうではなくて、「失敗の中にも僅かにある成功」に目を向ければ、決して無理な状況に耐え忍ぶような頑強な精神は、必ずしも必要ではないと言えるのではないでしょうか。

「ひぐらしのなく頃に」の主人公である古手梨花に例を見るなら、梨花は「諦めない精神」によってハッピーエンドを引き寄せたのでなく、奇跡という成功体験から「無理せずに湧いてきた勇気」によってハッピーエンドを引き寄せたと言える部分もあるのではないかと思います。

梨花が復活した理由――それは成功体験です。そして成功と失敗は、試験でいう100点と0点ではありません。たとえ1点でも、そこには成功があります。「失敗」によって自信を失っている人におすすめしたい理由はまさにそこです。その「失敗」は本当に「完全なる失敗」なのでしょうか。

そうでなければ、その分は「成功」しています。その成功からヒントを得ようとするならば、決して「失敗した経験を反省する」みたいな「辛い作業」はする必要がありません。成功を振り返って、それをほかのことにも応用するにはどうすればいいのか、と考えることは、きっと「楽しい作業」となると思います。

そうなれば、あとはその勢いでさらに大きな成功をすることに繋がるかもしれません。ところで、「ひぐらしのなく頃に」というタイトル。ちょっと気にならないでしょうか。とくに「なく」という部分。漢字で表記しても、決して難しいものにはなりません。

それがひらがなで「なく」となっているのには理由があるのだそうです。それは「泣く」「鳴く」の両方の意味を込めたいから――というもの。

当初は、「もうすぐ終わる、全部終わる、そう、ひぐらしのなく頃に」という台詞を最後に出すことを前提にして、このタイトルになったのだそうです。

その台詞の通りの意味なのだとすれば「鳴く」が当てはまりますが、物語の中ではいろんな人が、死んだり、人を信用できなかったり、助けられなかったりしています。直接的な表現が必ずしもあるわけではないですが、それらの心情を表すのだとすれば「泣く」が該当します。

夏の夕暮れを思い出させるような、静かなイメージと、泣きたいくらいの登場人物たちの心情を、うまく重ねているタイトルではないでしょうか。

サスペンスホラーとして、アニメとして、そして日常そのものという意味でのサスペンスホラーとして、そして失敗によって落ち込んでいる人に対して、「ひぐらしのなく頃に」は、おすすめしたい作品です。

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大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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