カルト教団 犯罪 ブランチ・ダビディアン事件

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ナイトメア・シンジ

大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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カルト教団 犯罪 ブランチ・ダビディアン事件

カルト教団、それは信者の思考を教祖の圧倒的カリスマ性と根拠なき教義でコントロールし、あらゆる財産を搾取し尽くす宗教のことである。この世に数多ある宗教の組織形態の中でも最も悪質なものである。

「信教の自由」をうたっている日本において、カルト宗教は、その「自由」を保持する当事者をマインドコントロールすることによって、間接的に「自由」を手中に収めることで、信者を拡大させていく。そして、犯罪に発展しない限りは国家権力から制限を受けることはまずない。

つまり、外からでは、どの教団がカルトで、どの教団がそうでないのかわからないのだ。ネット等で様々な宗教団体に「カルト」のレッテル貼りがされているのには、そういったことも背景にあるのだ。

ただ、カルトかどうかを見抜くヒントはある。それは、教団の成立過程を見ることだ。どういう経緯で創立されたのか、対立する組織はあるのか、対立の結果起こった事件は何か。それによって、カルトの傾向の有無を確かめることはできるのだ。

今回の記事では、ある教団の犯罪を紹介した後、その教団の成立経緯を記し、最後にカルト宗教を見分けるポイントを説明しよう。

集団事件の概要

1993年2月28日、アメリカの連邦捜査官はある建造物について捜査をおこなった。その名はマウント・カルメル・センター。テキサス州の都市ウェーコに位置する施設だ。この施設は、ブランチ・ダビディアン教会というキリスト教系団体の本部として使われていた。捜査を行った理由、それは大量の銃火器所持の疑いであった。

それは激しい銃撃戦だった。施設に立てこもる信者は銃を手に、捜査官に発砲を繰り返した。その結果捜査官は4人が死亡。信者も6人が死亡した。以後、51日間にわたる膠着状態が続く。

これにより、捜査はFBIが担当することとなった。そして、4月19日、司法長官の裁可を得て、FBIは強行突入に踏み切った。信者たちは観念するかに思われた。しかし、なおも抵抗を続け、最終的にはマウント・カルメル・センターは炎上した。集団自殺を図ったのだ。結果、81人もの信者が死亡。その中には20人以上の子どもも含まれていた。

なぜ、このカルト教団は自殺に及んだのか。今回の記事は、カルト宗教、ブランチ・ダビディアンについて迫っていきたい。

ブランチ・ダビディアンはどのように生まれたか―その発展と衰退

まずは宗教的立ち位置から見ていこう。ブランチ・ダビディアンはキリスト教系にして、「セブンスデーアドベンチスト教会」の分派にあたる。ざっくり説明するとこうなるが、これではむしろわかりづらくなってしまった。そこで、源流である「セブンスデーアドベンチスト教会」の説明から入ろう。

セブンスデーアドベンチスト教会は別名「安息日再臨派(あんそくびさいりんは)」とも称される、近代以降に発展したプロテスタント系の教派である。細かな教義の話は省略し、成立の経緯だけをこの段落では記そう。

19世紀前半に、アメリカで再臨待望運動というものが起こる。再臨とはキリストが世界の終りの日に再び地上に降りてくることである。その再臨の日を細かく予言するウィリアム・ミラーという者が現れたのです。

そして、その予言が外れた後もなお、なぜミラーは予言を外したのか、ということを考える人々が現れ、その人たちがセブンスデーアドベンチスト教会を形成していったのです。

ブランチ・ダビディアンは1934年に結成されたダビデ派セブンズデーアドベンチストに起因する。1980年代後半まで、細々と勢力を維持してきたブランチ・ダビディアンはバーノン・ハウエルという青年が指導者となった後に急速に勢力を拡大した。

1958年に私生児として生まれたバーノン・ハウエルは聖書に対し並々ならぬ関心を抱く少年であった。その関心度は12歳にして聖書を暗唱できるほどだったという。

ただ、その関心が行き過ぎて、17歳のころには、自分を救世主とみなすようになっていた。父親の顔を知らず育った私生児であったこと、失読症で高校を卒業できなかったことなどのコンプレックスの表れともいえよう。コンプレックスはハウエルを更に聖書にのめり込ませ、同時に孤独にしていった。

アルバイト先でも聖書の話ばかり行いクビに、もう一つの秀でた才能の音楽を活かしてハリウッドで勝負するも芽は出なかった。しかし、そんな彼でも才能が生きる場所があった。教団である。ハウエルはブランチ・ダビディアンへ入会し、めきめきと頭角を現した。

そして、当時1400人ほどの教団で二大派閥のうち一つの長になるほど勢力を保持したハウエルは、対抗勢力との激しい対立の末、教祖の座を得た。時に1990年、ハウエルが入会してわずか7年後のことであった。この対立は銃撃戦にまで発展したことから、ニュース等でも取り上げられ、世間に教団の名が認知された。

教祖になってから、ハウエルは自身をデビッド・コレシュと名乗った。これは聖書における二人の重要人物、ダビデ王(古代イスラエル王国の王)とキュロス2世(アケメネス朝ペルシアの建国者、ユダヤ人をバビロン捕囚から解放した)の名前がベースとなっている。

コレシュは、「最終戦争(ハルマゲドン)」論を説くことで勢力を拡大した。「最終戦争」とは善と悪による戦いである、この最終戦争が起こった際に生き延びることができるのは、神に選ばれた自分たちブランチ・ダビディアンのみ、という考え方だ。

この「最終戦争」から生き延びるために、という勧誘は、カルトの傾向が強い宗教に良く見られる。相手の焦りを助長し、加入へと導くのは、カルト宗教の常套手段である。

勢力を拡大させた一方で、コレシュは半ば被害妄想が如く、最終戦争に向けて自分たちが生き残るために大量の銃火器の購入を行った。そして拠点を要塞と化した。捜査当局から目をつけられたのはそういったところからである。

FBIがマウント・カルメル・センターを包囲した際にも、コレシュはいた。まさに今が最終戦争とばかりの態勢をとった。そして、周りの意見も、FBIからの説得にも一切聞き入れることなく、最後は自ら死を選んだ。多くの信者を道連れに―

以上が、ブランチ・ダビディアンについてと犯罪の当事者であるコレシュの生涯についての説明である。コレシュの生涯について、読んだ人の中には「あのジム・ジョーンズと同じじゃね」と思った人も多いだろう。

カルト宗教「人民寺院」の教祖ジム・ジョーンズも幼少期に聖書に異常にはまり、最後は集団自殺を遂げた。カルト宗教と言われる教団の教祖にはパターンにようなものがあるようだ。次の項目では、カルト宗教を見抜く方法について考えてみよう。

カルト教団 犯罪 ブランチ・ダビディアン事件

カルトの傾向って何だろう、宗教の情報に接しよう―

危ない宗教か否か、カルト教団か否か、その判別ができる人はいない。しかし、考えるための材料は多いほうが良い。この項目ではカルトの傾向がある宗教を見抜くにはどういうことをすればよいか、その手掛かりとなる情報を記す。

なお、この項目では半ば偏見と思われるような記述もあるかもしれないが、あくまでも目安として考えてほしいということであって、ヒントにかなった団体が全てカルトと述べているわけではないことをご了承いただきたい。

まず一つは教団の歴史的経緯を知ることだ、先述のブランチ・ダビディアンでもそうだが、内部争いで銃撃戦をやらかしてしまう団体はまず危ないと考えたほうが良い。また経緯を非公開にしている教団があっても、どの宗教のどの宗派にかつて属していたのかは特定したほうが良い。

根っこに巨大な宗教、巨大な宗派が存在する場合はそこから発信される情報を見て判断することができるからだ。もちろん、一方的な情報の可能性もあるので鵜呑みにしてはいけない。

また、学校の教科書レベルでも良いので、基礎的な宗教の知識を把握しておくことも重要だ。オーソドックスな宗教に比べて、カルト宗教がどのような立ち位置にいるのか、知ることで、その特殊性を感じることができるからだ。

宗教関係者は、生活の基準が宗教ととなっているので、勧誘するときはその教義や考え方が当たり前かのように語る。しかし、その語り口調に流されてはいけない。最低限の知識を持ち、時には反論せねばならない。

例えば、キリスト教の教団でカルト宗教かどうかを見定める時には、教科書で習う「宗教改革」の知識を持っておくといい。宗教改革とはヨーロッパで起こったカトリック教会の内部改革運動である。ルターやカルヴァンが当事者となって伝統的なカトリックを批判したのだ。

批判した勢力は「プロテスタント」と総称された。その結果、カトリックとプロテスタントの二大勢力の対立をもとに、ヨーロッパ諸国間で大きな戦乱が巻き起こった。

ドイツ農民戦争、ユグノー戦争、そして三十年戦争と15世紀から16世紀に起こった大戦争は宗教改革が背景にある。ちなみに、日本にキリスト教を伝来させたと言われるフランシスコ・ザビエルはカトリックの宣教師であり、プロテスタントの動きをけん制するために、世界中にカトリックを布教していた。

こうした経緯を考えると、プロテスタントの系譜をひく団体ほど革新的かつ過激なものを求める傾向があることがわかる。そしてその活動は大々的なものが多い。アメリカで公民権運動を起こしたかの有名なキング牧師もプロテスタントであることを考えればイメージもわきやすいだろう。

セブンスデーアドベンチスト教会にしろ、ブランチ・ダビディアンにしろ、源流はプロテスタントにある。ただし、断っておくが、プロテスタント系の教団がカルト宗教であると言ってるわけではない。

日本の伝統的宗教である、仏教や神道については、近代以降の動向を調べてみると良い。江戸時代末期あたりから、日本では天理教や黒住教をはじめとする新宗教が台頭し始めた。新宗教の大きな特徴は中山みき(天理教)や黒住宗忠(黒住教)のような圧倒的なカリスマ教祖の存在である。

神がかりに近い現象を経験し、人を超越した力を得た教祖が周囲の人々を救済する。ほとんどの新宗教は大まかに言えばそういう経緯で教祖にカリスマ性を持たせた。

ある種インチキとも受取られかねない日本の新宗教ではあるが、この形態が近代では受け入れられた。その背景には急速な近代化があった。教育、産業、身分制度など明治維新以降に起きた生活環境の変化は日本国民を混乱の渦に巻き込んだ。

そんな状態の人々にとっては、経緯はどうであれ、進むべき指針を示してくれるカリスマ教祖の存在はありがたいものであったのだ。また、日本の宗教観の根本にある「八百万の神」すなわちあらゆるものには神が宿っていてそれらが共存しているという考え方も後押しをした。

つまり、信仰する存在が複数あることは仏教や神道の考え方だと別に悪くないので、新宗教が進出する余地があったのだ。こうして、新宗教という形態は近代の日本に受け入れられ急速に発達、諸団体が勃興しては乱立することとなった。

そして、不況や戦争などにより、心に不安を抱える人々が増える時期に新宗教は発展した。

さらに、各宗教団体の教祖についての情報を知っておくことも重要だ、どういう環境で育ったのか、逮捕歴はあるのか、信者拡大のためにどのような活動を行ったのか。家族構成はどうなっているのか、親族を組織の要職につけているのか、など、小さな情報から人間性を探っていくことが大事である。

情報化社会の今日なのだから、ネット検索だけでいくつかの情報に触れることはできるし、深く知りたいと思ったならば、教祖ほどの人物となると自伝を出版している可能性もあるので、それを購入して読んでみるのも良いかもしれない。もちろん、情報に対しては常に懐疑的な姿勢であらねばならないが。

以上のように、大まかな宗教の情報に触れることによって、カルト的な傾向があるのかどうか自分で判断することができる。ただ、これだけ長々と語りながらも絶対的な正解がないのも事実。見極めはじぶんでしなければならない。

今回、ブランチ・ダビディアンの犯罪と通じて、カルト宗教とはどんな性質を持っているのかを考察してみた。寛容的であると同時に無関心と言われやすい日本人の宗教観。私腹を肥やすカルト宗教はまさにそこに漬け込む。そうならないためには、自身で情報に接していくしかない―

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