演技における練習用セリフと高倉健のある言葉

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ナイトメア・シンジ

大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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今日は演技における練習用セリフについてお話しましょう。

練習用セリフ初心者編

筆者が”まったく演技が始めて”の方に、

一番最初に、演技の練習用セリフに用いる題材があります。
さき えつやの「こえことばのレッスン2ことば編」(晩成書房)の演題2です。

”降ッテキタ”

この”降ッテキタ”を、様々な場合を想定して、幾通りも言ってもらいます。

例えば、
雨が降ってきたのを”見て”言ってもらう。
次に”聞いて”言ってもらう。
”一粒、雨が肩に当たって”言ってもらう。
などなど。
(数種類のバリエーションで)

続いて、

より感情表現を磨くための”状況設定”

ひとつ、例を挙げましょう

あなたは、滅多に雨の降らない土地に住んでいる。
雨水は何よりも貴重です。さあ、空が突然真っ暗に曇り始めて、雨の予感がします。
あなたは雨水をためようと大きな壷を持って雨を待ちます。
住民達も思い思いのバケツや入れ物を持って空を見上げています。
待望の雨が降り出しました。

”それ、水をためろ!”そう思った時の”降ッテキタ”は?

どうです?

”短い、些細なセリフ”でもたくさんの感情をのせることができますね。
言い方を変えることによって、様々な心の動きや感情、状況を表すことがわかると思います。

続いて、”多少なりとも演技らしいことをしたことがある”、”記憶がある”という方には、
こちらの演技練習用セリフをやっていただきます。

「こえことばのレッスン2ことば編」(晩成書房) 行動/ことばから(Ⅰ)

短いシーンをやってもらいます


A あっ!だいじょうぶ!
B もうだめだ。
A なに、いうの!さあ、しっかり。
B にげるんだ、わたしにかまわず。
A いやよ、がんばって、いっしょにいくのよ。
B いいいから、はやく!

(まず最初はセリフのみ、続いて”動き”も入れて)

AとBは”何かから逃げている設定”です。
(自然災害、悪者など)
この練習用セリフが実に難しい。
読むのは簡単。言うのも簡単。
”ただのセリフとして口に出す”のは、誰でもできます。 

でも、

演出家・脚本家・映画評論家・演技講師・リーディング講師・ナイトメアプロダクションCEO の6つの顔を持つナイトメアシンジ

大事なポイントがあります

”臨場感はあるか?”
”会話”として成立しているか?
”リアル”に演じられるか?

ここが”演技の難しさと楽しさ”が同居しているところ。
日常では、およそ交わされないだろう会話を”違和感”なく演じられるかどうかが大事なのです。

セリフって難しい。
演技って難しい。

ナイトメアシンジ
心折れました?それじゃあ、ダメです

高倉健

NKH「プロフェショナル 仕事の流儀」(2012年9月10日放送)の”高倉健スペシャル”で俳優の高倉健が映画「あなたへ」の中の”あるセリフ”について話していることが、とても興味深い。
当時、高倉健は81歳。出演した映画は。すでに200本以上。

映画「あなたへ」は2012年8月25日に公開された降旗康男監督の日本映画です。そして、
この映画「あなたへ」は高倉健最後の主演作品でした。

脚本は青島武。

上映時間は111分。

では、高倉健の”あるセリフへの想い”をお話しする前に、映画「あなたに」のあらすじを簡単に紹介させていただきます。

映画「あなたへ」あらすじ

富山の刑務所で指導教官を務める倉島英二(高倉健)の元に、亡くなった妻の洋子(田中裕子)から絵手紙が届く。そこには“故郷の海に散骨して欲しい”という洋子の今まで知らなかった想いが記されていた。

英ニは洋子の真意を知るためにワンボックスカーで、洋子の故郷の長崎県平戸の漁港、薄香まで一人旅を始める…。
(他に綾瀬はるか,浅野忠信、ビートたけしなどが出演)

高倉健の”あるセリフへの想い”とは?

当時87歳の大滝秀治との海上でのシーンです。

大滝秀治のセリフは、
「久しぶりにきれいな海ば見た」
という短いもの。
(高倉健は、この場面で泣いた。自身では、”泣くと思わなかった”と言っている)

最初に高倉健が台本で、このセリフを読んだ感想は”なんてつまらないセリフなんだろう”だったという。しかし、その短い、つまらないセリフが大滝秀治の口をついて出た瞬間、高倉健はハッとした。

たったそれだけの言葉に、この漁村で暮らす人々の生活の厳しさが、凝縮して聞こえたというのだ。

高倉が、その大滝の芝居について語った言葉。「大滝さんが(あのセリフを)言われると、ああいうふうに、なんかこの作品のテーマみたいなね。すごいなあと。ぼくはその話は、佐藤(浩市)くんと草彅(剛)くんにしたんですけど。たった一人の俳優さんが、今回の出演者の中では最高齢の人ですよね、ああいうことができる仕事なんだなあと。はあって思いましたね」

役者は”カッコイイ職業”

役者は
”どんな拙いセリフにも息を吹き込む事ができる”

そんなことが如実にわかるインタビューだと思いませんか?


画像出典:ウィキペディア(Wikipedia)

高倉健は私達に数多くの映画を残して、2014年11月10日に死去されました。
この映画「あなたへ」は亡くなった大滝秀治の遺作でもあります。
お二人のご冥福をお祈りします。

「演技における練習用セリフと高倉健のある言葉」を読んで下さった読者様へ

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”今宵も悪夢は世界のどこかで誰かが見る”

(ナイトメア・シンジ)

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