怒る演技は難しいか?映画のシーンを踏まえて語ってみる

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ナイトメア・シンジ

大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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怒るの演技は難しいですか?”と聞かれることがあります。
筆者はそうは思いません。

喜怒哀楽の演技の中で“怒る“は一番容易い

なぜなら、生まれてきてから、程度の差はあれ、”怒る”という感情を知らない人はいないからです。人間にとって一番出しやすい感情が”怒る”でもあります。

”演技は想像力である“

ということは以前、お話しした通り。でも、”想像”以前に自分の中の”引き出し”にあれば、もっと簡単ですよね。

”怒る”の演技で唯一難しいところがあるとするなら、それは”表情”です。

「演技入門」(株式会社ダヴット社)

水品春樹は「演技入門」(株式会社ダヴット社) の中で”表情”についてこう書いています。

”顔にはたくさんの筋肉繊維が走っているこの筋肉繊維へは、神経の末端が分布している。これらの神経の動きは、思想や意志に依存する。そこであらゆる思想と情緒とは、その特殊なメッセージを筋肉に伝え、それに相当する表情を、そこに刻みだす。この筋肉への思想の伝達を表情というのである” ”怒る”という表情を出す人もいれば、そうでない人もいる。

(いや、日本人は表情に出さない人は多いかも。出せば、直情型と言われ、あまりよろしくない評価を受ける)

”怒る”

ナイトメアシンジ
以前、自分が受けた仕打ちなど思い出し、鏡で自分の表情を観察する。(キミはすぐに表情に出るなーと言われる人は簡単かも)

映画「アウトレイジ」の”怒り”

一方で、”表情”でなく身体の動きや声の高低、言葉から”怒り”は表現できます。
(こちらはやや技術が必要)

怒りのシーンをひとつ例に

2010年の北野たけし監督”全員悪人””下剋上、生き残りゲーム”のキャッチ・コピーで有名なヤクザ映画「アウトレイジ」から。

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バンダイビジュアル
塚本高史演じる村瀬組組員の飯塚は、組の”ぼったくりバー”で客引き兼恐喝係を務めている。サラリーマンに成りすました大友組(ちなみに大友を演じるのは北野たけし)の組員岡崎から金を巻き上げようとして、飯塚が組事務所に誘い込まれ、抗争の火種になる場面。

事務所のソファに越しかけている池本組内大友組若頭水野役の椎名桔平に気づき、嵌められたことを悟る飯塚。

水野「悪かったな、取りにこさせて」(優しく)
飯塚「…」
水野「100万だったか?」(何気なく煙草を咥えて)

大友組金庫番の石原役の加瀬亮が水野に無言で札束を渡す。

水野「持っていけよ」(気持ちよく)

水野は飯塚に札束を差し出す。

水野「ほら」(フレンドリーに)
飯塚「…いえ、結構です」
水野「結構ですって何だよ」(少し、気分を害した感じで)
飯塚「いえ、…その」
水野「はっきり、喋れよ」(イラっとして)
飯塚「…、池本組だって…知らなかったもんで…」
水野「なんだとコラ!」(強めの口調)
飯塚「すいません」
水野「池本組ならタダなのか?この野朗!」(後ろのソファに体重を預け、煙草は右手に持ち、詰問するように)
飯塚「本当にすいません!」
水野「てめぇ、金取りに来たんだろ!さっさと持って帰れ!」(恫喝)
飯塚「勘弁してください」

飯塚に煙草を投げつけ、

水野「持ってかえれって言ってんだろ!」(怒鳴る)

飯塚、札束を握り締め、逃げるように戸口へ向かう。その後ろ姿に、
水野「なめんな、コラ!」あるいは「二度と来るな、ボケ!」または「ざけんな、ボケ!」
(何を言っているか聞き取れない)

ナイトメアシンジ
ラストの椎名桔平のセリフは”怒りの感情”が増幅しすぎて、うまく聞きとれません。(このあたりをリアルと取るかどうかは演出家次第です。ちなみに筆者は聞き取れるセリフが好み。緊迫感より、”あれっ?今、何って言った?”としばし、観客が引きずるのが怖い)
性格が悪い見方ですいません
この、猫がネズミをいたぶるようなシーンは感情の起伏があって、”表情”の変化も見どころ。演じる役者としても面白いシーンに違いありません。なぜなら、絶対的、優位にある時、人はあせらないし、そのような状況を楽しみます。

実生活でそんな事をしたら、人格を疑われます。
でも、お芝居は”架空”だから許されます。

芝居、やってみたくなりました?特に”悪い人”の役

映像演技の真髄

塚本高史の演技

余談ではありますが、このシーンの塚本高史の演技も素晴らしい。

椎名桔平の前の塚本高史は、”出来るだけ小さくなろう”と椅子に座っています。その様でこの場面の力関係が一発でわかります。

動物の動きを演技の参考に

演出家・脚本家・映画評論家・演技講師・リーディング講師・ナイトメアプロダクションCEO の6つの顔を持つナイトメアシンジ

やくざが身体を大きく振って、ゆっくり歩くのは自分を大きく見せたいからです。(クマが後ろ足で立ち上がり、腕を上げるのと同じ)

逆に服従する側はなるべく地面に近づいて、ひたすら自分を小さく見せます。
(弱い犬が地面にひれ伏し、下から伺うように見上げるように)

動物の動きは演技の参考になることを覚えておいてください。 

”怒る”の演技の最後のアドバイス。コレが出来れば、難しくない。

前出の水品春樹は「演技入門」の中でこうも書いています。

よく、芝居をしている”ふり”をすることが、あたかも演技であるかのように錯覚している人が、今だに演る方にも観る方にも、ずいぶんあるようですけれども、演技は決して、その人物の”ふり”をするのではなく、あくまでその人物に成り切って生きることなのです。

演出家・脚本家・映画評論家・演技講師・リーディング講師・ナイトメアプロダクションCEO の6つの顔を持つナイトメアシンジ
うん。これは”怒る”うんぬんでなく、総ての”表現”に通じますね。

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”今宵も悪夢は世界のどこかで誰かが見る”

(ナイトメア・シンジ)

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大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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