園子温の挑戦。映画『アンチポルノ』は日活ロマンポルノをどう捕らえたのか?

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ナイトメア・シンジ

大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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今日、ご紹介するのは園子温監督の映画「アンチポルノ」です。

当然のことながら、R18+指定。

映画「アンチポルノ」は2017年1月28日に公開され、様々な反響を呼んだ作品です。

上映時間は72分。

日活ロマンポルノ45周年を記念して企画された「ロマンポルノ・リプリート」の一作として制作された映画です。

”70分前後で、10分に1回の濡れ場、撮影期間は1週間、オリジナルであること、制作費は定額”というマニフェストのもとに制作されました。

日活ロマンポルノとは?

1971年(昭和46年)、日活はワンマン社長であった堀久作による放漫経営などの結果、業績下降に直面、堀は電撃退陣して同時に常務の壺田重三ら久作の側近も事実上追放された。ほとんどの専属俳優はフリー、他社やテレビ業界へと活躍の場を移した。

12月末に日活と配給を組んでいた大映が破産した結果、1953年(昭和28年)から足掛け18年にわたって続いた五社協定が最終的に崩壊。翌1972年(昭和47年)には東宝が自社での映画製作を大幅縮小、多くの専属俳優を解雇するという映画業界は瀕死の状態を迎えた。

1971年(昭和46年)、対立を続けていた日活本社と労働組合が手を携え「映像委員会」を設置して打開策を検討。

”ポルノでも何でもいいから映画を撮りたい、カメラを回したい”という気持ちから日活は大手映画会社の一角でありながら、会社を生き残らせるため、ポルノ主体の路線へと舵を切る。

こうして制作されることになった日活ロマンポルノ。

日活ロマンポルノとは1971年(昭和46年)から1988年(昭和63年)にかけて日活(1978年(昭和53年)に社名変更し「にっかつ」になった)で映画制作された日本の成人映画のことである。

予算も限られ、短納期の量産体制という厳しい環境ではあったが、”裸さえ出てくれば、どんなストーリーや演出でも何も言われず自由に制作できるという表現の自由を尊重した映画作品作りが可能だった。

ナイトメアシンジ
キャリアの浅い監督や脚本家にとっては、自分の作家性を遺憾なく発揮できる稀少な場であったことは間違いなく、日活ロマンポルノを”足ががり”に日本映画界に巣立っていった若手映画クリエイターは少なくない。何人か挙げておく。

神代辰巳・曾根中生・石井隆・和泉聖治・金子修介・崔洋一・周防正行・相米慎二・滝田洋二郎・那須博之・根岸吉太郎・村川透・森田芳光など。

日活ロマンポルノがなければ、日本映画界は違ったものになっていたはず。

では、園子温監督の映画「アンチポルノ」について紹介していきます。

いかにも園子温らしい

タイトルのアンチは

”アンチテーゼ”の略。

ある主張に対してそれを否定する内容の主張。対立命題。反立を意味する。

いわば、”ポルノの否定”

主演の京子役に富手麻妙(とみてあみ)。

(元AKB研究生。映画「新宿スワン」(2015)や「リアル鬼ごっこ」(2015)など園子温ファミリーの一人)

京子のマネージャー典子役に筒井真理子。


画像出典:ウィキペディア

(2016年映画「淵に立つ」で毎日映画祭主演女優賞受賞。筆者には鴻上尚史率いる演劇集団「第三舞台」の演技と美貌が印象的)

それでは、映画「アンチポルノ」のあらすじをご紹介します。

映画「アンチポルノ」あらすじ

京子は特殊なメソッドを使い一躍スターダムに、のし上がった若き小説家。

書き始める前に小説の登場人物を肉づけするために、巨大なキャンバスに登場人物を描き、

細部を移し変えた後、その絵に囲まれて小説を書き出す。

その絵は小説が刊行された後に個展として発表され、読者は展覧会場で登場人物と向き合い、小説で得た読後感をスケールアップした新たな感動を得るというものだった。

奇抜で大胆なその手法が話題となり、京子はアーティストとして世間から熱狂的な支持を得ていた。

黄色く塗られた広いワンルーム。

目覚めた京子はそっと呟く。

「今日が誕生日だってことは黙っておこう」
やがて、マネージャーの典子がスケジュュールを伝えに京子のもとにやって来る。

雑誌のインタビューや撮影など典子が伝えるスケシュールは分刻みの忙しさ。

京子はいらだち、やがて、典子へサディスティックな振る舞いをするようになってゆく。

「おまえは売女になれるか?」

「四つん這いになって犬のように吠えてごらん」

首輪をつけられて部屋を引きずり回される典子。

典子は言う。

「先生のような売女になりたいです」

自分は「世界最高の売女で処女だ!」と叫ぶ京子。

部屋の片隅では、ピアノで”二つのアラベスク”を弾く妹の幻影。

父と義母との食卓。

天井に切り込まれるノコギリ。それは裂け目として広がってゆく。

「この国の女は自由じゃない!」と大声で宣言する京子。

死んだはずの妹と蝶。

父と養母の肉体関係の場を覗く京子。

新たな執筆へのプレッシャー。

自分は誰を演じているのか?

これは撮影なのか?

自分は何を、誰を演じているのか?

出口はどこなのか?

虚構と現実の狭間で、のた打ち回る京子の錯乱が続く…。

映画「ロマンポルノ」はポルノにあらず

ポルノ作品として見ると肩透かしに遭います。

舞台のような長回し。

黄色い部屋。

(トイレだけ赤い)

思いきって、推理ものにしたら良かったかも
ガストン・ルルー作の密室トリックを扱った古典推理小説「黄色い部屋の謎」(1908)を筆者に連想させます。

主人公は実感消失症にも見えます。
(ボルノの主人公には成りにくい)

現実消失症とは?
身体または精神から自分が切り離されたような感覚が持続的または反復的にあり、自分の生活を外から観察しているように感じること(離人感)や、自分が外界から切り離されているように感じる症状。
ナイトメアシンジ


画像出典:youtube

頻繁に登場するビンの中に閉じ込められたトカゲ。トカゲがビンの外側を見ている閉塞感が物語の核なのかもしれません。
(つまらん)

園子温らしい見事な色彩感覚は楽しめます。
(ただ、それだけ)

筆者は主演の 富手麻妙が好みのタイプじゃないこともあり、ストーリーに入り込めませんでした。
(すいません)

映画「アンチポルノ」は一昔前のアングラ演劇を見ているようです。売女、クソというフレーズが劇中をこれでもかというくらい飛び交います。
(インパクトは特にない) 
映画「アンチポルノ」

ポルノへのアンチテーゼ。
ポルノへの問題提議。
にっかつポルノですが、ポルノに非ず。

興味のある方はご覧ください。

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”今宵も悪夢は世界のどこかで誰かが見る”

(ナイトメア・シンジ)

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大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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