人間が怖い日本映画『赤い殺意』は重喜劇

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ナイトメア・シンジ

大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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今日、ご紹介するのは、今村監督が”自らベスト”と認めている重喜劇映画「赤い殺意」です。

”重喜劇”とは、”軽喜劇”をもじった今村昌平監督の映画を象徴する言葉です。
(ちなみに軽喜劇とは1930年代に生まれた言葉で、ライトコメディ、スラップステックコメディ。観客を笑わせる劇の意)
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人間が怖い日本映画「赤い殺意」は直木賞作家藤原審爾の小説を映画化した作品

藤原審爾は1921年3月7日生まれ。純文学からサスペンスまで幅広い作品を手がける小説家。「泥だらけの純情」や「新宿警察」など映画化、ドラマ化された作品も多い。1952年「罪な女」「斧の定次郎」「白い百足虫」で第27回直木賞を受賞 

人間が怖い日本映画「赤い殺意」の公開は1964年6月28日。

上映時間は150分。
モノクロ映画。

監督はカンヌ映画祭で2度もグランプリに輝いた日本を代表する映画監督の一人、今村昌平。
(今村昌平監督について映画「復讐するは我にあり」にも書いています。興味のある方は御覧下さい)

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映画「赤い殺意」の出演者をご紹介

主演の貞子に春川ますみ。
(映画「トラック野郎」(1975~1979)シリーズの愛川欽也の妻役が有名)

貞子の夫、吏一役は西村晃。
(この映画「赤い殺意」で演技が認められ、ブルーリボン賞、毎日映画コンクールなどで助演男優賞を獲得。1983年には日本で最も有名な時代劇TVドラマ「水戸黄門」の水戸光圀を演じる)

強盗の平岡に露口茂。
(ご存知、日本テレビの刑事ドラマ「太陽にほえろ!」の超人気キャラクター”お落としのヤマさん”。若い人は知らないか…)

オール宮城ロケの映画です。

全編、東北弁です。
(今村監督はロケ至上主義で合宿撮影)

では、人間が怖い映画「赤い殺意」のあらすじをご紹介します。

映画「赤い殺意」あらすじ

昭和30年代の東北の宮城のある町が舞台。貞子は一人息子の勝と夫の吏一と三人暮らし。貞子は夫の吏一の出張中、強盗に襲われる。

息子は祖母の家に預けており、無事であった。貞子は強盗に殴打しされて転倒し、気を失う。強盗はスタンドのコードで貞子を縛りあげて家を物色し、貞子を犯して消える。

貞子は自殺を試みるが、すんでのところで思いとどまる。出張から戻った帰ってきた夫に打ち明けようとするが、それも出来ない。

夫の吏一は大学の図書館勤め。小心者で傲慢で倹約家。吏一は職場の同僚の義子と5年もの間、肉体関係にある。

2日後、再び強盗が貞子の前に現れる。貞子は抵抗しながらも強盗に抱かれてしまう。強盗の名は平岡。平岡はトランペット吹きで心臓に病を抱えていた。

平岡は貞子に「もうじき死ぬんだ、あんたに優しくしてもらいたいんだ」と話す。戸惑う貞子。デパートで再会した平岡に声をかけられた貞子を義子が目撃、吏一に報告する。吏一は平岡を近所の学生と勘違いして貞子の不倫を疑う。

しばらくして、貞子は妊娠に気づく。心配する貞子に「腹の子は俺のだ。東京に一緒に行こう」と迫る平岡。貞子は平岡の申し出を拒否する。

吏一の父清三の葬儀で、貞子は自分が妾腹だという理由で入籍されず、息子の勝が清三の子とされていたことを知って愕然とする。

吏一には不倫を執拗に疑われ、追い詰められた貞子は平岡を殺そうと農薬入りの水筒を持って平岡を訪ねる。

貞子と平岡は、上野行きの汽車に乗るが、途中、豪雪で不通となってしまう。吹雪の中を徒歩で汽車の動く先まで歩くことにする貞子と平岡。その後を、決定的な不倫の証拠を押さえようとカメラ片手に貞子が追う。

疲労困憊した平岡は心臓の薬を失くしてしまい、人気のないトンネルで絶命する。動揺した貞子は一人、駅へ戻るが…。

日本映画「赤い殺意」の凄さ

劇中、貞子が悪夢にうなされるシーン。真っ暗闇の中、貞子奈落の底に転落するような場面があります。今でこそ、実写やアニメでよくあるシーンですが、おそらく今村昌平がフロンティアかも。

アイディアが秀逸
平岡に乱暴されるシーン。
アイロンの底に写る貞子の悲しげな表情。
まるで西部劇
後半、走る汽車の最後部で貞子と平岡がもみ合いになるシーン。今では、合成になるだろう場面を”引き画”で撮っています。

貞子の夫の吏一が電気掃除機を買ってきて貞子に見せるシーン。
(当時は貴重品)

くどくど嫌味を言いながら”一日中、部屋でゴロゴロしているお前なんかに買ってきてやったんだぞ”とか言いながら、掃除機の実演をします。セコくて、独善的な男を演じる西村晃が素晴らしい。
(水戸黄門までは数々の悪役を演じることになる西村晃らしからぬ配役にニヤニヤします)

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人間が怖い映画「赤い殺意」

ラスト近く、貞子の不倫を押さえようと尾行する義子が衝撃的な最後を迎えます。(その前の雪山の追跡のシーン。トンネルの入り口付近で高いところから滑って落ちてゆく義子も凄い。偶然?演出?びっくりです。必見)
ナイトメアシンジ

平岡との逃避行の顛末で、身体の調子を崩して入院している貞子のもとに、吏一は亡くなった義子が残したカメラのフィルムを現像して持っていきます。証拠写真を貞子に見せて、不倫を問い詰める吏一。

吏一「これ、おめぇでないか?」
貞子「ワタシじゃないです」
吏一「おめぇだろ?」
貞子「ワタシに似てますが、ワタシじゃありません」
吏一「どう見もおめぇだべ?」
貞子「ワタシじゃありません」
吏一「おめぇだべ?」
貞子「ワタシじゃないです」

最後まで貞子はトボケます。
シラを切り通すのです。

(こんなのあり?フツウは観念して白状しますよね?春川かすみの絶妙なキャスティングとしかいいようがない。ホント、笑ってしまいます。凄い!)

で、貞子は無事、入籍することになり、吏一は布団に中で貞子に甘える大円団を迎えます。(まさに重喜劇!)

”人間は見たいものしか見ない。聞きたいことしか聞かない”

今村昌平は人間の本質を突く。

人間が怖い、面白い。映画「赤い殺意」、ちょっと長いですが、お時間あれば、御覧下さい。
(2019年7月2日新装DVD発売&レンタル開始!)

次回は読者リクエスト、
先が読めない映画「シャッターアイランド」をご紹介します。

”今宵も悪夢は世界のどこかで誰かが見る”

(ナイトメア・シンジ)

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大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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