初心者が演技を練習するにおいて大事なこと

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ナイトメア・シンジ

大学時代に現劇団の前身「スパースターノイローゼ」旗揚げ。 1989年劇団「営業二課」設立。 1997年松竹シナリオスクール卒業。 フェニックス掌編文学賞入賞。 2009年8月から2017年2月まで中央林間カルチャースタジオ演技講師に就任。 現在は映画脚本、舞台演出、脚本、ラジオドラマ制作、リーディング講師など精力的に活動中。 演技指導はマンツーマンを基本に行っている。 日本劇作家協会会員。 劇団営業二課主宰。 横須賀まなび館演技講師。

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今回は、
初心者が演技を練習するにおいて大事なこと”についてお話します。

演技には種類がある

すべての演技を、ひとくくりにするのは間違いです。
演技と言っても様々です。

舞台演技と映像演技(テレビや映画など)が違うことは、多くの人が知っています。
ですが、実は”舞台の演技の仕方”もひとつではありません。
わかりやすく言うと、劇場の大きさによっても変わってきます。

池袋サンシャイン劇場は1階席だけで、642席。一番後ろの席は23列目です。
23列目で観劇するなら、単純に考えても舞台から20メートル以上あるわけです。
(後方の席の方はオペラグラスで観るとしても)

舞台の役者が目線だけの芝居をしても、ほとんどの観客には伝わりません。自然と首を動かしたり、手や身体を動かすことで”感情や思い”を伝えるわけです。

逆に100席以下(小劇場と呼ばれる)だと10列以下になります。
(小劇場の場合、客席から舞台までほとんど距離がない)

役者の息遣いまで聞こえるため、大きく動かなくても観客に役者の感情が伝わります。
(わざと大きく動く芝居もあるが、それはコミカルさを訴えるため)

演劇だからと言って大きく動く必要はないのです。
舞台でも、客席のキャパによって演技の仕方が違うのです。

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映像演技であれば、カメラが近くにある”寄り”というカットなら、目の動きや唇を噛み締めるだけで、観客に”役者が何を思っているか””何をしようとしているか?”が伝わります。
(大きく動くと画面からはみ出すこともあります。経験の少ない役者がやりがち)

ですから、演技の仕方はひとつではありません。
役者には、その場の状況に応じた演技が必要なのです。
初心者はそれを肝に銘じて練習するべきなのです。

初心者に大切なこと

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演技の練習の中で声に出して”セリフを言う”のはとても大事です。
筆者は役者には何度も何度も繰り返し、声に出してセリフを言うよう指示します。
初心者がセリフを言うと、それは”ただのセリフ”でしかないことが多くあります。
いわゆる”読むことの延長”です。

感情も状況も理解せずに放ったセリフは読むことと、なんら変わりありません。
筆者は心の声、本当の言葉、会話になるように何度も言わせます。
そうすると、大抵の人が上手くなります。
(全員ではありませんけど)

ひとつ例をあげましょう。
「私の嫌いな探偵」というドラマがテレビ朝日で放映されました。
(2014年1月~3月)

主演は玉木宏と剛力彩芽。
(玉木宏は2001年の佳作日本映画「ウォーター・ボーイズ」の好演が印象に残ります。剛力彩芽は最近、色々あり過ぎて、ドラマから遠ざかっているのは残念です。コミカルな演技と意地悪な役は、結構上手にこなす女優です。まだまだ上手くなる要素があります。2011年TVドラマ「アスコーマーチ!県立明日香工業高校行進曲」の意地悪な女子高生相沢桃役は、なかなかの出来です)

TVドラマ「私の嫌いな探偵」の原作は東川篤哉の同名ミステリ小説。
脚本は今や映画やテレビ、舞台と引っ張りだこの演出家福田雄一です。

探偵でありながら、殺人事件よりお金持ちの子犬探しを選ぶビジネスライクなキャラクター鵜飼杜夫を玉木宏が、その探偵事務所がある建物のオーナー(大家)でミステリー好きな女子大生二宮朱美を剛力彩芽が演じています。

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第1回放送にこんなシーンがあります。
大家である朱美のすすめでイヤイヤ殺人現場に一緒にやって来る鵜飼。
屋上から転落した遺体には背中に刺し傷があります。
元グラビアアイドルでバラエティータレントのM(今回はあえて、名前を伏せてご紹介。調べればわかりますけど)は、渡辺いっけい扮する砂川五郎警部の部下役で登場します。

Mが砂川警部に報告するセリフ。
「今、屋上を探していますが、これといった物証は残っていませんが…」
(むむむ。確かに”が…で終わっている)

もうひとつ、
状況を勝手に憶測する朱美にMがイラっとして言うセリフです。
「屋上から落ちる瞬間を見た目撃者がいるんです!」
(感情が中途半端すぎ)

Mはどちらのセリフも、一気に平坦に喋ります。
(ただ、セリフを読んでいるだけ)

完全なミスキャストです。

筆者には、渡された台本をただ眺めて暗記したセリフにしか聞こえません。

(砂川警部は”早く家に帰りたい”ために探偵の鵜飼に捜査協力をちょくちょく依頼するのですが、Mの役はその鵜飼を快く思っていないけれど、異性としては少し気になる、勝気でキレイな若い女性刑事のオイシイ役です。脚本家でもある福田雄一らしい面目躍如な鵜飼や朱美とのコミカルなやりとりもありますが、実に惜しい。Mでなければ、もう少し可笑しく面白いやり取りになっていたはず)

Mは2002年からテレビドラマに時折出ているようですから、これがデビュー作品ではありません。
(オリンピックで活躍したスポーツ選手がワン・シーンだけドラマに出るのとは違います)

忙しい中でのドラマ・オファーでセリフを練習する時間がなかったのでしょう。
あるいは、自分のセリフだけ練習しすぎてしまった可能性もあります。

初心者が陥りやすい練習の仕方

自分のセリフだけ何度も読む。
これは、致命的です。

一人芝居でない限り、相手役が居る事を忘れてはいけません。
ただのセリフでなく”会話になること”が大事なのです。

初心者には、そのために相手役のセリフも練習することをおすすめします。
違う角度から見ると、自分のセリフが違って見えます。
新しい発見があるはずです。

誤解のないようにお伝えしておきますが、Mはその後は少しだけ、上手くなりました。
(たぶん)

次回はバイオレンス邦画「孤狼の血」をご紹介します。
お楽しみに。

”今宵も悪夢は世界のどこかで誰かが見る”

(ナイトメア・シンジ)

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